2018年03月28日

ネット中継に最も適したモバイル回線はどれか?

ネット中継をする際、どこの現場にも有線接続可能なフリーポート回線があれば良いのですが、そうとは限りません。
企業内の回線だと、ネット中継用のポートはかなりの確率で塞がれていますし、接続出来てもゲスト回線として回線速度が異様に遅く制限されていたり。遅くなる事が多い
はたまたフリーポート回線が使えたとしても有線接続は禁止でWiFiでの接続しか許されてなかったり。しかもそれが結構不安定な接続状態だったり。

そんな状況下だと会場の回線を使うのは諦めて、持ち込みモバイル回線で配信した方が面倒が無くて確実です。
その場合、どのキャリア回線を使用するのが良いのかを検証・考察してみました。

今回の検証に使用したのは以下の端末です。

・Softbankスマートフォン(XPERIA Z5)でのテザリング接続(USB)
・auスマートフォン(XPERIA XZ1)でのテザリング接続(USB)
・Y!MobileポケットWiFi(502HW)での接続(USB)


docomoはありませんが、現状はSoftbankと似たような回線仕様なので同じ結果になると思って良いのではないかと思います。

普通に接続して配信を行うぶんには上記のどの回線でも電波さえちゃんと安定していれば問題ありません。

問題なのは、音声着信した時やメールが届いたりした時の挙動です。

Y!Mobile 502HWはデータ通信専用端末なのでその心配はありません。
電話番号は割り振られていますが、それに電話しても常に話し中になります。その時502HWには何も起こらず、問題なくデータ通信が継続されます)

結果は以下の通りです。
mb1.png

Softbank/docomoはテザリング中に音声着信すると中継配信が途切れます。

以前より、Softbank/docomoはデータ通信時に音声着信してもデータ通信は途切れないという事を謳っていましたが、それはあくまでスマホ本体のデータ通信が途切れないという意味であり、テザリング接続でのデータ通信とはまた別の話です。
テザリング通信の場合、音声着信するとデータ通信は途切れます。
これがSoftbank/docomoの現状の仕様の様です。

auは途切れませんでした。以前よりauは回線仕様上、データ通信中に音声着信があるとデータ通信が途切れるという事を弱点としていましたが、2014年末位から採用された「au VoLTE」という仕組みによって解消されています。
https://bit.ly/2pMm5px

解消されたと言っても、どうせSoftbank/docomoなんかと一緒でテザリング接続時の挙動は違ってて、途切れたりするんでしょ?
という疑惑があったのですが、実験の結果、途切れない事が分かりました。

次に音声着信ではなく、メール着信時の挙動についても検証しました。

2MB弱のメールを5通同時にテザリング接続中のスマホに送った時の挙動で、結果は以下の通りです。
mb2.png

これも音声着信の時とほぼ同じ挙動になりました。

Softbank/docomoでは途切れましたが、メール受信が終わると30秒位で復帰しました。
音声着信で途切れた時は復帰まで2〜3分位かかったので、これは回線の仕組みどうこうと言うよりかは単にトラフィック量的な事に起因しているのだと思います。
試しに、送るメールを1通だけにしたらSoftbank/docomoでもデータ通信は途切れませんでした。

いつも大きなファイルサイズのメールが多量に送られてくる様な人のスマホでなければ、メール着信はそんなに気にしなくても問題ないと思います。

さて、今の所auスマホテザリングが優勢ではありますが、じゃぁSoftbank/docomoスマホテザリングはダメなのか?というと逃げ道はあります。
音声着信拒否アプリで音声着信を拒否すれば良いのです。

今回は「ネコの着信拒否アプリ」を使って音声着信拒否設定をして検証しました。
https://bit.ly/2GhwQXc

mb3.png
結果は上記の通り、Softbank/docomoの場合であってもテザリング接続のデータ通信は途切れませんでした。

という訳で、Softbank/docomoスマホテザリングの場合でも音声着信拒否設定をしていれば、問題なくネット中継用回線として使う事が可能です。

何れにせよ、スマホのテザリング接続の場合、着信リスク以外にも、スマホ本体側でバックグラウンドで色々なプログラムが動作しているので、予期せぬタイミングで別のデータ通信が発生する可能性がある事は否定出来ないので、メインで使うという事は避けたほうが無難だとは思います。

また、数千数万といった来場者が来る様なイベント現場だと、スマホ電波がイッパイになって使えなかったり接続が不安定になる事が多いです。
そういった現場でも「Y!MobileポケットWiFi」なら使っている人は少ないので、問題無くつながる事が多いです。
電波回線的にはSoftbankスマホとY!Mobileは同じですが、Softbankスマホが接続不能でも、Y!Mobileならつながる事が多いので、同じ電波回線であってもY!Mobile用にある程度接続チャンネルを空けているのではないかと思います。あくまで想像ですが。

ウチの場合は、メインはスマホの様なしがらみがない「Y!MobileポケットWiFi(502HW)」を使用していて、電波状態が悪い時の為に保険的にauスマホテザリングを使っています。
もちろん、auスマホテザリング接続での配信を使う時は、不要な通信が発生しない様に、アプリ通知を全て切って、バックグラウンドでの自動アップデート等も発生しない様に設定した状態にしています。

あと、UQ WiMAXはどうなのかという事についても触れておきます。
実際にレンタルして使ってみたのですが、WiMAXは電波的に接続出来ないという事はあまりないのですが、電波が弱い場所が多く、回線速度も遅い事が多いです。
特に屋内での通信ではかなり遅い事が多く、ネット中継用途では頻繁に寸断が発生します。

もちろん、常に決まった場所でしかネット中継は行わず、その場所でのWiMAXの電波の入りが非常に良いのであれば、WiMAXでも良いと思いますが、ウチの様に色々な場所に持ち込んで使用するという事になると、WiMAXは選択肢から外れます。

そんな訳で結論としては、「Y!MobileポケットWiFi」が最強で、次点としてauスマホテザリング、次々点としてSoftbank/docomoスマホテザリング(但し音声着信拒否アプリは必須)という事になります。

それと、どのモバイル回線デバイスを使ったとしても接続はUSBで行ってください。
WiFiでの接続も可能なので、配信用PCにWiFiで接続したくなるかもしれませんが、ただでさえモバイル回線という不安定要素的なものを使っているのに、そこに更にWiFiという不安定要素を追加する必要も無いと思いますので。
(実際、モバイル回線デバイスを親機にしてWiFiを使って配信をするとよく寸断します)

USB接続に使用するケーブルのグレードや長さにも注意が必要です。
Y!MobileポケットWiFi付属のUSBケーブル(502HWなら1mのが付属)であれば何も問題ありませんが、サードパーティー製のものを使う時は気をつけなければなりません。

私の場合、以下の2つのUSBケーブルを試してみた事がありますがどちらも安定した伝送は出来ませんでした。

MPA-AMBXLP20BK(2m)
https://amzn.to/2pLkkIp

UKJ-XLC3(3m)
https://bit.ly/2pLivuZ

おそらく、ケーブルがスリムだった事と、ケーブル長が長すぎたという事によるノイズが理由だと思います。
電波系のデバイスは非常にノイズに敏感なので、ケーブルはしっかりとしたものを選ぶ必要があります。

ケーブル長も長すぎるとケーブル自体がアンテナの様な役割を果たしてしまいノイズが混入しやすくなりますので、1m程度にしておくのが無難です。
となると結局、Y!MobileポケットWiFi付属のUSBケーブルを使うしかないジャン!という事になります。
スマホの場合、Type-C→USB3.1ケーブルで国内メーカのものは、Type-C側の端子が緩いものが多く、殆ど選択肢が無いというのも悩みどころです)

最後に、加入プランにもよりますが、どのキャリアであっても帯域制限というものがあり、直近の3日間のデータ通信量が、6〜10GB位を越えると著しくデータ通信量が制限されてしまい、ネット中継用途として使えなくなるので注意してください。
その他にも月間データ使用量制限というのもあるので、気をつけたい所です。

例えば3Mbpsでネット中継を2時間行うと、2GByteを消費します。
実際にはプレビュー受信やテスト配信もする事になるので、その2倍強の5GByte位は消費すると思っていた方が良いでしょう。

前日設営時にみっちりと長時間回線テストを行ってしまうと、翌日の本番の時に帯域制限が発生してしまって使えないといった事態にもなりかねないので前日設営時の接続テストは手短に済ます必要があります。

では良いモバイル回線中継ライフを!
posted by dtmz at 08:22| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月04日

ZOOM H1n レビュー

ZOOMからH1の後継機としてH1nが出ていたので買ってみました。

【ZOOM H1n】
http://amzn.to/2I3xngr

hontai.png

液晶は青いバックライトが点きます。
ekishou.png

何故か背面の図がマニュアルに無いので載せておきます。
ちゃんと三脚用の穴があります。
(一般的なカメラ用三脚のU1/4サイズの穴です)
本体背面形状はスロープがかかっています。
あまり大きなシュー(ベース)を取り付けようとすると隙間が空いて安定しなくなるので注意が必要です。

back.png

普通に収録出来るのは当たり前なので、気になる挙動と特性について調べました。

・録音中に電池が切れた時
→電池が切れそうになった段階で、電源がオフになる直前にファイルクローズ処理が正常に行われるので、電池が切れる直前までの音は正常に収録されます。編集ツール等でも問題無く読み込めます。

・電池が切れそうな時のバックライト
電池の残りが最低表示(メモリゼロ)になると、バックライトの点灯時間設定状態に関わらず、バックライトは点灯しなくなります。(マニュアルにこの仕様は未記載です)

・録音中にSDカードを抜いた場合(wav形式収録でテスト)
録音中のファイルは壊れます。
ファイルとしては残りますがファイルの中身の整合性が取れてないので編集ツール等で読み込めません。
但し、raw形式で無理やり読ませれば抜いた数秒前位までは読み込めます(ヘッダー部は当然ノイズになります)
mp3だとraw読み込みは出来ないので、何か特別な理由が無い限り通常はwavで収録した方が良いでしょう。

・リミッターをオンにして収録した時の波形状態
-6dB付近(最大振幅可能縦幅の約1/2付近)でリミッターがかかります。
もっと上の音量(-2dBより上)でリミッターがかかって欲しいです。
リミッターのスレッショルドレベルを設定する事は出来ません。

【参考画像】
前半がリミッターオフ後半がリミッターオンの波形です。
h1n.png

リミッターがオンの時、画面に表示されるレベルメーターはリミッターを通過した後のものです。
-6dBという結構低めの音量でリミッティングがかかってしまう仕様な為、リミッターがオンなのを忘れて「まだまだ上に余裕があるな」と思ってGain調整を行ってしまうと、Gainを大きめに設定してしまい、リミッターがかかりまくりの音になってしまう(レンジを狭くしてしまう)危険性があります。
現場では、まずリミッターはオフにしてゲインを調整して、次に保険的にリミッターをオンにするという手順が必要だと思います。

・S/N比
→ゲインを上げる(7/10以上)と割とセルフノイズが大きくなります。
値段なりですが使えない程ではないと思います。
izotopeでRXで消しやすいホワイトノイズなので事後編集前提なら問題無いと思います。

・録音中に電源オフの操作をする
「録音中です」と画面に表示されて電源は落とせません。

・HOLDスイッチをオンにした状態でのGainダイヤル操作
→受け付けます。HOLDスイッチがオンでもGainダイヤル操作は有効なので、うっかり手がぶつかったりして操作ダイヤルを誤操作してしまわない様に注意が必要です。
因みに、Gainダイヤルの動き具合は多少固めに作られているので本体を振ったりした程度では動きません。

・ライン入力での録音
→ミキサー(MACKIE 402VLZ4)のメインアウトを接続してテストしました。
(ミキサーのメインアウト音量は0dB付近に調整)
H1nのGainを3.0〜3.5位にするとピークオーバーLEDが点滅しない位の状態になるのでそれで録音してみましたが、録音された音はかなり歪んでいて全く使い物にならない音でした。

【参考画像(録音された歪みまくりの波形)】
full.png

【参考画像(横軸方向に拡大したもの)】
kaku.png

また、H1nを接続すると、ミキサーのメインアウトLEDの点灯が何故か20dB位減ります。(でも出音の音量には変化なし)

【左チャンネルのみH1nに接続した状態】
down.png

これはインピーダンスがあまりにも違うデバイスを接続した時に発生する現象なのですが、接続元のミキサーの状態にすら悪影響を及ぼすという事で、やはりH1はH1nになってもライン入力対応というのが殆ど詐欺みたいな仕様だというのは変わっていませんでした。
マニュアルにはライン入力対応については殆ど記載されていないので、基本的には接続しないで欲しいのでしょう。
もういっそライン入力には非対応って言い切った方が良いと思うんですが。
そもそも「マイク入力兼ライン入力端子」っていう仕様自体に無理があると思いますし。

【総評】
まだ出たばかりなせいかそんなに値引率は良くは無い価格(約1.4万円[税込])ですが、あと3,000円出せば(私的に)完全無欠なTASCAM DR-40が買える訳なので、音質や使い勝手の良さで言うならDR-40の方に軍配が上がります。
ただ、少しでもコストを下げたい場合や、見た目の方サイズの小ささを優先したいのであれば、H1nという選択肢は悪くはないと思います。
現場ではステージ上の機材の影に隠す様に設置して収録したいという時もありますので、小さいというのは大きなメリットにも成り得ると思います。

しかし、ライン入力が使い物にならないのはともかく、リミッター機能はもうちょっとどうにかならなかったのかなぁと思います。
リミッターをオフにしてゲインを-6dBあたりに来る様に設定して収録してもまだ倍のレンジは確保出来る訳なので、-6dBからリミッターがかかってしまう様ではリミッターを使うメリットが低いです。
リミッター機能に関しては「無いよりはマシ」といった程度のものですね。
私的にはファームアップでリミッターがかかるスレッショルドレベルを-2dB位に設定出来る様にするか、DR-40みたいにデュアルゲイン収録が出来る様に改善して欲しいです。

【ZOOM H1n】
http://amzn.to/2I3xngr

【TASCAM DR-40】
http://amzn.to/2jnvGRn
posted by dtmz at 18:41| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする